nobitokisu.com

発酵食品と日本の四季

旅人たちの地図発酵食品と日本の四季

日本の発酵食品には「旬」があります。味噌は冬に仕込み、梅干しは夏の土用に干し、ぬか漬けは秋の野菜が最もおいしい。四季の移ろいとともに発酵食品を楽しむことは、日本人が何百年もかけて培ってきた暮らしの知恵です。ここでは、春夏秋冬の発酵カレンダーをご紹介します。

春(3〜5月)── 目覚めと仕込みの季節

味噌の「天地返し」

冬に仕込んだ味噌は、春になると発酵が活発になり始めます。この時期に行うのが「天地返し」——味噌を上下ひっくり返して空気に触れさせ、発酵のムラをなくす作業です。味噌の状態を確認し、カビが生えていたら取り除きます。

山菜と発酵

春の山菜は、アク抜きの過程で乳酸発酵させることがあります。わらびやぜんまいを塩漬けにして保存する技法は、山間部の春の恵みを一年中楽しむための知恵でした。

春の甘酒

ひな祭りに飲む「白酒」や甘酒は、春の風物詩です。麹の甘さが春の訪れを祝う気持ちと重なり、季節の行事と発酵食品が一体となった文化です。

夏(6〜8月)── 発酵が最も活発になる季節

ぬか漬けの最盛期

高温多湿の夏は、ぬか床の乳酸菌が最も活発に活動する季節です。きゅうり、なす、みょうが——夏野菜のぬか漬けは、暑い日の食欲を刺激してくれます。ただし、気温が高すぎるとぬか床が過発酵を起こすため、1日2回のかき混ぜが欠かせません。冷蔵庫で管理するのも一つの方法です。

梅干しの土用干し

6月に塩漬けにした梅を、7月下旬の土用の時期に3日間天日干しするのが「土用干し」。この工程により、梅干しの赤い色が鮮やかになり、保存性も高まります。梅干しは塩分と有機酸による保存食でありながら、乳酸発酵も関与する複合的な発酵食品です。

夏の甘酒 ── 江戸の栄養ドリンク

意外なことに、甘酒は俳句で「夏」の季語です。江戸時代には夏バテ防止のために冷やした甘酒を売り歩く「甘酒売り」が夏の風物詩でした。ビタミンB群やアミノ酸が豊富な甘酒は、現代でいう栄養ドリンクの役割を果たしていたのです。

秋(9〜11月)── 収穫と仕込みの準備

新米と日本酒の仕込み

秋に収穫された新米は、精米・洗米・蒸し工程を経て、日本酒の仕込みに使われます。多くの酒蔵では10月頃から翌年3月頃まで醸造作業が続きます。秋に出回る「ひやおろし」は、冬に仕込んで春に火入れし、夏を越して秋に出荷される日本酒で、まろやかな熟成感が楽しめます。

秋の漬物仕込み

秋は冬の保存食を仕込む季節でもあります。白菜の塩漬け、大根のたくあん漬け、野沢菜漬けなど、各地で冬に向けた漬物の仕込みが始まります。特に信州の野沢菜漬けは11月の初雪の頃に漬け込むのが伝統で、「お菜洗い」と呼ばれる地域の行事は、今も続いている地域があります。

冬(12〜2月)── 寒仕込みの季節

味噌の寒仕込み

味噌づくりに最も適した季節は冬です。「寒仕込み」と呼ばれるこの時期の仕込みが良いとされる理由は、低温でゆっくり発酵が進むことで雑菌の繁殖が抑えられ、味に深みが出るからです。1月〜2月に仕込んだ味噌は、夏を越えた秋頃に食べ頃を迎えます。

寒造りの醤油と酢

醤油や酢の醸造も、冬の寒い時期に仕込む「寒造り」が伝統的です。特に伝統的な木桶仕込みの醤油蔵では、冬に仕込んで四季を通じて自然の温度変化に任せて発酵・熟成させる方法が今も続いています。

冬の保存食としての発酵

東北や北陸では、冬の間は雪に閉ざされるため、秋までに仕込んだ発酵保存食が命綱でした。47都道府県の発酵食品マップでご紹介している東北の発酵食品の多くは、こうした冬の保存の知恵から生まれたものです。

発酵カレンダーを暮らしに取り入れる

現代では、温度管理技術の発達により一年中発酵食品を作ることができます。しかし、季節に合わせた発酵食品づくりを体験すると、自然のリズムに寄り添って暮らしてきた先人の知恵を肌で感じることができます。

まずは一つ、今の季節に合った発酵食品から始めてみてはいかがでしょうか。発酵食品の選び方・楽しみ方ガイドも参考にしてみてください。「発酵の旅人」では、季節ごとの発酵食品情報も順次追加していく予定です。

Contact

ご不明な点がございましたら
お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら →